Column

「一番信用できるのは人の目」と
言われて、照合ファイルが却下された話

2つのExcelを突き合わせて、数字が合っているかを判定する。それだけのファイルを作りました。動かせば数秒で終わります。でも、その仕組みは現場に入りませんでした。理由を何年か考えていて、最近ようやく整理がついたので書きます。

1日30件から50件を、人が二度読む

ある公共施設での話です。利用者の方が、利用報告書という紙に手書きで記入します。人数、時間、用途。それを職員がExcelに入力します。1日あたり30件から50件。

後日、別の職員がその数字が合っているかを確認します。紙とExcelを並べて、目で追います。ここに機械は入っていません。

この確認作業を見ていて、私はExcelを2つ用意してキーで突き合わせるファイルを作りました。合っていれば何も出ない、ずれていればその行だけ表示される。作業としては数秒です。

提案は、施設長のところで止まりました。採用されませんでした。

却下された理由は、技術ではなかった

明確な理由を聞いたわけではありません。ただ11年この現場にいると、だいたい想像はつきます。

ひとつは、マクロ入りのExcelファイルへの警戒です。公的な組織では、マクロが入ったファイルをあまり歓迎しません。中で何が動いているか外から見えないからです。

もうひとつが本命だと思っています。「一番信用できるのは人の目だ」という判断です。

その言い分は、実は間違っていない

ここで「現場が遅れている」と切り捨てるのは簡単です。でも私はそう思っていません。何年か考えて、むしろ相手の言い分には理があると思うようになりました。

理由は責任の所在です。人が目で確認して間違えたなら、確認した人の責任です。話は単純で、次にどうするかもすぐ決まります。ところが自動判定の仕組みが間違えた場合、誰の責任なのかがはっきりしません。作った人か、運用した人か、条件設定を決めた人か。

公的な業務では、この曖昧さが致命的になり得ます。中身が見えない仕組みを「たぶん大丈夫」で通した結果、後から説明できない事態になるほうが、よほど怖い。その判断は、私は理解できます。

効率だけを見れば負けている選択でも、責任の設計まで含めて見れば合理的なことがあります。現場の人は、たいてい何も考えていないわけではありません。私たちが見ていない基準で、ちゃんと判断しています。

ただ、人の目にもミスは出る

とはいえ、目視確認は完璧ではありません。当然ミスは出ます。そして、そこから先が長い。

間違いが見つかると、本部からメールが来ます。「人数が違います、訂正してください」。そこから始まる作業を並べてみます。

  1. その日の利用報告書を、倉庫から探し出す
  2. 紙の記載を確認する
  3. 「3人」を「5人」に書き換える
  4. Excelに手で入力し直す
  5. Outlookで本部に送り直す

1件のミスに対して、5工程です。しかも倉庫から紙を探す時間は、その日の書類量によって変わります。運が悪ければこれだけで30分かかります。

これを何年も続けています。

本当のコストは、チェックではなく手戻りにある

ここが今回いちばん書きたかったところです。

目視確認そのものは、実はそこまで高くつきません。30件から50件を目で追うのは、慣れれば数十分の作業です。

高いのは手戻りのほうです。倉庫を探し、紙を出し、書き換え、再入力し、送り直す。この5工程には、最初の入力にはなかった作業が全部含まれています。加えて、本部の担当者がミスを見つけて連絡する時間もかかっています。

つまり議論すべきは「人がやるか機械がやるか」ではありません。ミスが下流でどれだけ増幅されるかです。上流で1件見逃すと、下流で5工程が発生する。この構造を数字で見せられれば、話の通り方は変わったかもしれません。私はそこを説明しきれませんでした。

折り合いのつけ方があるとすれば

いま同じ提案をするなら、私は全自動にはしません。次のように出します。

  • 機械は「ここが違うかもしれない」と指摘するところまで
  • 合っているかどうかの最終判断は、人がする
  • ファイルにマクロを入れず、関数だけで組む
  • 何をどう突き合わせているか、手順書を1枚つける

これなら「人の目が最後に見る」という原則を壊しません。人は50件を全部読む代わりに、指摘された3件だけを丁寧に見ればよくなります。中身が見えないブラックボックスにもなりません。

変えるべきは、確認するかどうかではなく、確認する対象を絞ることでした。当時の私は、そこまで考えが及んでいませんでした。

まとめ

データの照合を自動化する話は、技術的にはたいてい簡単です。難しいのは、その仕組みを現場が受け入れられる形にすることです。

「人の目のほうが信用できる」と言われたら、それは反論すべき意見ではなく、条件だと思ったほうがいい。その条件を満たしたまま、確認する量だけを減らす。遠回りに見えて、これが一番早いと今は思っています。

そのExcel、そろそろ人手をやめませんか

2ファイルの照合、重複の削除、表記揺れの統一。「小さすぎてシステム会社には頼めない」作業を1件から承ります。行数と困っている内容をお知らせいただければ、対応可否と概算料金を無料でお答えします。

データ整理を相談する

Excel・CSVデータ整理サービスを見る

← コラム一覧へ戻る